今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』読了
この本を読む前に読んでいた本がコレ。
Kindle版はコレ→ “The Language Game“
日本語版はコレ→ 『言語はこうして生まれる』
この本を買うときいちばん安値だったのが原書のペーパーバック版だったのでそれにしたけど、今は原書のKindle版が安い。リンクはすべてAmazonジャパンに飛ぶ。
言語つながりでこの2冊の本を読んでみた。
この記事では『言語の本質』について感想を。
人間はいつからことばを話しているのか、どうやってことばができあがったのか、日本語はいつできたのか、言語について考えていると、正解はないけどなんだかワクワクするよね。
ワクワク — 日本語のオノマトペ
日本語にはオノマトペ(小学校の国語の授業で勉強する擬音語とか擬態語とかのことば)が多いってのは知ってた。Google検索でオノマトペがいちばん多い国で調べてみたら、トップで日本が出てきた。
オノマトペや単語の語源にはこれまで興味がなく、言語学者とか英語の先生とかがSNS上で語源を知ることを推奨してたけど、「そんなん知っても言語ができるようになるわけじゃないから、いらん」と思ってた。(いまも率先して調べようとは思ってないけど笑)
オノマトペや単語に含まれる音(音象徴)には興味があった。
音象徴っていうのは音の持つイメージで、「ハラハラ」「パラパラ」「バラバラ」でそれぞれ頭に浮かぶ映像は違う。「バラバラ殺人事件」が「ハラハラ殺人事件」だと不安げな犯人のイメージになるし、「パラパラ殺人事件」になると平成のギャルがやられたのか…いろんな想像ができる。
この本を読む前から興味があったのが、『馬鹿』
BAKA — 阻害音のBで始まる — 阻害音は「角ばった」「硬い響き」のイメージ
他人をののしるときによく使われる「ばーか」ということば。Bに力を込めるとほんとうに馬鹿を表現できそうだ。
STUPID — 英語でいう馬鹿も阻害音Sで始まる
信じられないくらいの回数アメリカドラマに登場することば。この単語を知らずにアメリカドラマを1週間ほど観れば、かならず耳に残る。
Sも阻害音だけど、Uで音を伸ばしたあとのPでさらに阻害音、そしてDの阻害音で終わらせる。馬鹿にしがいがある。
PABO/BABO — 바보 — 韓国語でいう馬鹿も阻害音Pで始まる
英語でこの単語を検索するとBABOって表記されるけど、韓国人は「パボ」って言ってる(よね?)
育ちのいい韓国人としか交流がなかったので、韓国人同士で「바보!」とか言い合ってるのは聞いたことがないけど、日本語といっしょで子音が2つとも阻害音なのがいい。
オノマトペと人間の赤ちゃんや幼児がどのようにことばを学習していくかを、人間の乳幼児とチンパンジーを対象にした研究もすごく興味深い。
『アブダクション推論』は今回はじめて知った名称だったけど、個人レベルで幼いころから無意識でやってる論理で、これで人間という種が繁栄して科学技術が発展していった。
アブダクション推論がなにかってのは、この本を読むか検索すればわかると思うけど、本の中に書かれてた例で思い出したことがあったので実際あったことを書いてみる。アブダクション推論の規則と結果が逆転してしまう対称性推論について。
博多の中洲にはたくさんの屋台があるのは、福岡県外のひとでも知ってると思う。
川沿いに並んだ1つの屋台に行列ができている。
そのラーメン屋は全国の観光雑誌にも取り上げられた。
観光客たちは行列ができているし、観光雑誌にも載っているから、美味しいと思う。
(美味しいから行列ができているわけでも、雑誌に載っているわけでもない)
原因と結果が逆になる論理。
ちなみに地元民にはまずいと言われていた。おれが子どものころの話だからいまもその屋台が存在しているのかはわからないし、名前も覚えてない。飲食系には多そうな現象だと思う。
英語教育をする上でもすごく参考になった。
言語好きなひとにはかなりおすすめの本です。